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こんにちは、冬子です。冬の子供と書いてトウコと言います。
私は北の大きな都市の外れにある、小さなお家に居候させてもらっている幽霊です。
十二月になりました。いつ根雪になってもおかしくない気配です。
クリスマスが近づいているため街中はとても華やかです。店頭ではクリスマスソングがひっきりなしに流れています。赤や緑、金銀の装飾で彩られ、街路樹などはイルミネーションがぴかぴかと輝いています。
どことなく道行く人たちの雰囲気が楽しそうです。
私もなんだかつられてそわそわしてしまいます。
クリスマスだからと言って何があるわけでもないのですが。
あぁ、でも大通公園のミュンヘンクリスマス市を覗きに行くのは楽しいかもしれません。
今度の週末、お天気がよければ継春くんを誘ってみましょうか。
最近の継春くんはより一層たくさん絵を描いています。
忙しそうにしているわけではないですが、お休みの日にお出かけするのは減っている気がします。
でもそれは冬になって寒くなったせいかもしれません。
まだ雪は積もっていないとは言ってもやはり気温はだいぶ下がっていますから、出かけるのも億劫になってしまいますよね。
私は幽霊なので気温を感じることはないのですが、道行く人の吐く息の白さや、身に着けている防寒具で寒さを目に見ています。
暗くなるのもずいぶんと早くなりました。
三時を過ぎればもうだんだんと薄暗くなっていき、四時にはもうすっかり夕闇になってしまいます。
最近は日が暮れてからお散歩がてら継春くんを迎えに行っています。駅まで、ですけど。
先月ぐらいまでは自転車で登下校していたのですが、雪が頻繁に降るようになってからは地下鉄を利用しているので、その最寄り駅までです。
改札のところで継春くんが来るのを待って、一緒に家に帰ります。
お休みの日に一緒にお出かけすることが減っている代わりに、時々、遠回りして帰ることもあります。
すっかり暗くなってしまった道を、ひっそり声を潜めておしゃべりしながら帰ります。
主にしゃべっているのは私なのですが、時には継春くんもぽつりぽつりとお話ししてくれます。その日あったことや見たこと、思ったこと、感じたこと、いろいろなこと、とりとめもないこと……。v 話す継春くんの口から白い息がこぼれます。
「冬子さんはさ……ちゃんと、成仏……っていうのかな、したいと思う?」
「……どうでしょう。よく、わかりません。ただ……私はどうしたらそうなれるのか……どこへいけばいいのかわからないので」
答えながら、いつか見た光景を思い出します。おばあさんがくるのを待っていたおじいさん。二人で一緒にいってしまった光景。
もしかしたら、と思います。
「誰かに連れてってもらえばいいのかもしれません」
「ふうん……」
ちらちらと薄曇りの暗い空から雪が降っています。
じゃあさ、と継春くんが言います。
「いつか……、いつかだけどさ、俺が死んで、まだ冬子さんが幽霊やってるようだったら、一緒に行く?」
それはきっと継春くんにとってはとりとめもない話です。
私にとっては、とてもうれしい話でした。
「そうですね……いつか、待ってます」