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 継春は叔父さんの誕生日プレゼントに絵をあげることにした。
 正確に言うならば、プレゼントは二面の写真立てで、その中に描いた絵を入れて渡すというだけなのだが。
 何を描こうか少しだけ悩んで、この家を描いた。
 居間の大きな窓から見た春の庭の景色と、叔父さんの飼い猫であるトラコさんが窓辺で寝そべっている様子だ。
 誰かにあげるためにきちんと絵を描くのは初めてで、緊張しながら描いた。
 絵描きを目指しているとはいえ、まだまだ未熟な自分の絵より、やはりちゃんとした物を買ったほうがいいのではないかと、描きあがってから渡すまでの間に幾度となく考えては打ち消すのを繰り返した。
 写真立ては叔父さんの好みそうなデザインの物にしたのだからと、どうにか自分を納得させて、夕食後に渡した。

「誕生日おめでとうございます。……あと、一応婚約のお祝いも兼ねて……全然大したものじゃないんだけど」

 叔父さんはプレゼントの中身を見て、すぐに気が付いてくれた。

「あれ……この中に入ってる絵ってもしかして継春くんの?」

 気恥ずかしくて視線を少しそらしながら継春は頷いた。

「これってウチの庭とトラコさんだよね!」
「あの……中のは抜いて、普通に写真立てとして使って構わないので」
「そんなもったいない! せっかくもらったんだからこのまま飾らせてもらうよ」

 叔父さんの嬉しそうな様子に、継春は少しだけほっとして息を吐いた。

「喜んでもらえたなら……良かったです」
「とっても嬉しいよ、本当に」

 叔父さんはそれからもう一度ありがとうと言って、ひとまずはと居間の飾り棚の上に写真立てを置いて夕食の後片付けをしにいった。
 叔父さんが離れたのを見計らって、冬子さんがそっと近付いてきた。

「喜んでもらえて良かったですね」

 我がことのように嬉しそうな彼女に、継春は頷いた。
 彼女が写真立ての中の絵を覗きこむ。
 それに合わせて継春も自分が描いた絵に視線をやった。
 トラコさんをなでる手と、画面の端で花に顔を寄せている人影――それが冬子さんだとはまだ彼女自身にも告げていない。
 いつか、と継春は思う。叔父さんにも描いた人物について話せる日が来るだろうか。