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 こんにちは、冬子です。冬の子供と書いてトウコと言います。
 私は北の大きな都市の外れにある、小さなお家に居候させてもらっている幽霊です。
 ご主人である修也さんとその甥っ子の継春くん、飼い猫のトラコさんと一緒に暮らしています。とは言っても私は幽霊なのでこっそりですが。
 十月も終わりが近づき、北の大地はもうすっかり初冬といった様相です。
 辛うじて初雪はまだですが、それも時間の問題でしょう。
 今月末はハロウィンです。仮装をしてお菓子をもらうお祭り……でしょうか。ここ数年で定着してきたイベントです。
 元々はケルトのお祭りで、秋の収穫をお祝いして悪霊などを追い払うお祭りなのだとか。
 ただ、日本では仮装イベントみたいな感じになっているようです。
 すべてテレビのニュースの受け売りなのですが。
 今日は継春くんとお出かけしています。
 今回の目的はスケッチや美術館などの絵にかかわることではなく、珍しくお買い物です。修也さんの誕生日が近いので、プレゼントを探しています。去年はシンプルなハンカチをあげたそうです。今年は日ごろのお礼と婚約のお祝いも兼ねて、少し良い物にしたいのだとか。
 そう、婚約です。
 ご結婚はまだ数年先の予定らしいのですが、もうご両親への挨拶なども済ませられているのだそうです。
 まだ何を買うか決まっていないのですが、とりあえずということで街中まで出てきました。

「お菓子は無難だけど……」

 継春くんはお菓子屋さんのショーウィンドウを覗いてはうーんとうなっています。
 やはりこの時期なので全体的にハロウィンモチーフのお菓子ばかりが並んでいます。
 それが悪いことではないのですが、継春くんの買いたいもののイメージには合わないみたいです。
 食べ物屋さんのフロアを上がって、服屋さんのフロアを覗いていきます

「冬子さんは何がいいと思う?」

 頼ってもらえるのはとてもうれしいのですが、申し訳ないことにあまり良いアドバイスはできそうにもありません……。

「ネクタイ、だと少し硬すぎるでしょうか……」
「どうだろう……カジュアルそうな柄のとかならいいかな。マフラーとかはこれからの時期に良さそうだけど……去年使ってたの気に入ってるみたいだからなぁ」

 なかなか決まりません。難しいですね。
 でも継春くんと色々なものを見てお話しできるのは楽しいです。
 次に雑貨屋さんのフロアにきました。

「ずいぶんと変わった文房具がありますね」
「面白いけど……仕事では使えないだろうなぁ、多分」
「あ、写真立てはどうでしょうか」
「写真立てか……使ってくれるかな……あぁ、でも写真立てなら……」

 何か思いついたみたいです。
 継春くんはシンプルな二面の写真立てと、ラッピング用品を買いました。

「どうするんですか?」
「写真立てに写真サイズの絵をいれて渡そうかなって。絵を出せば普通に写真立てとして使えるし、写真を飾らないでそのまま絵とか……他のポストカードとか好きな絵を飾っても良いし」
「それは素敵ですね。中に入れる絵は継春くんが?」
「うん……お祝いになるかわかんないけど、何か描いてみようかなって」

 継春くんは少し照れくさそうに言いました。