Under the umbrella

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 こんにちは、冬子です。冬の子供と書いてトウコと言います。
 私は大きな北の都市のはずれにある小さな家に居候している幽霊です。
 六月も半ばを過ぎました。
 だんだんと暖かくなってきていたのですが、ここ数日は雨の日が続き、気温も低めの日が続いているようです。
 今日もせっかくの日曜日ですが、朝から雨です。風は強くないようですがしとしとと降り続いています。
 今の大きな窓から外を眺めながら、どうしようかなと考えます。
 雨続きだったため、最近はめっきり家にこもっていたのですが、久しぶりに外に出てみようかとも思います。
 私は幽霊なので傘はさせませんが、幽霊なので雨にも濡れないのですから。
 それでもなんとなく憂鬱な気がしてしまうのだから不思議ですね。
 今日は、継春くんはどうするでしょうか。
 継春くんは最近、何やら考えこんでいることが多いような気がします。
 絵を描いていても、ふと手を止めてしまうのです。
 どうかしたのかと聞いても、なんでもないと首を横に振ります。
 幽霊である私が力になれるようなことなんてないでしょうが、何かしてあげられないだろうかと思ってもしまいます。
 早く悩み事が解決するといいのですが。
 今も、スケッチブックとペンを手に持っていますが、完全に止まってしまっています。また何やら考え込んでしまっているみたいです。

「継春くん」

 考え事の邪魔をしてしまうのは申し訳ないですが、一応、声をかけていくことにします。
 名前を呼ばれて我に返ったようではっとしたように顔を上げました。

「ちょっと、散歩に行ってきますね」
「あぁ、うん……いってらっしゃい」

 継春くんはやはり今日は出かけないみたいです。
 お休みの日は一緒に過ごしていることが多いですが、たまには継春くんも一人になりたいこともありますよね。
 それでも私は少し寂しいなと思いながら、外に出ました。
 空には灰色の雲が隙間を開けずに並んでいます。そこから細く小さな雨粒が地面に途切れることなく降り注いできています。