Spring for the second time

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 こんにちは、冬子です。冬の子供と書いてトウコと言います。
 私は北の大きな都市の外れにある、小さなお家に居候させてもらっている幽霊です。
 三月も終わり、四月になりました。
 さすがの北の大地もだいぶ春めいてきています。
 地面の雪もほとんど消えて、白かった地面には緑色の芽が伸びています。
 北国ですから、そう簡単に春はやってこず、まだ冷たい風が吹くことも、湿った重たい雪が降ることもあります。
 それでも弥生が終わり、如月最初の土曜日の今日は穏やかでいい天気です。
 お家の主人である修也さんと同居している甥の継春くんは珍しくお二人でお出かけしていきました。
 継春くんは一緒に来るかとこっそり聞いてくれましたが、せっかくお二人でのお出かけなのだからお邪魔をするのはいけないと思い、遠慮させてもらいました。
 代わりに私はいつもの居間の窓際でトラコさんと日向ぼっこをしています。
 穏やかな日差しの中でぼんやりとしながら、私は春が好きだなと思います。
 継春くんのお陰で、初めて冬でも楽しいと思えましたが、やはり春が一番好きです。
 そういえば、と思います。
 冬が終わって春がやって来るということは、継春くんと出会って季節が一巡りしたということでもあります。
 もう一年、とも思いますが、まだ一年、とも思います。
 継春くんのお陰で、この一年の間に私は色んな経験をすることが出来ました。
 楽しいという気持ち、嬉しいという気持ち、沢山の感情も貰いました。
 そのせいか、私は前よりも欲が深くなってしまったようです。
 私は幽霊で、継春くんは生きている人です。
 それは変えられない事実です。分かっています。
 なのに、願ってしまうのです。
 今がずっと続きますように、と。
 継春くんと一緒に色んな場所に行って色んなものを見て、色んなお話しをする今の日々が、ずっと、続けば良いのに、と。
 きっとそんなことは無理だと分かってはいるのだけれど。
 それでもせめて……せめて継春くんがこのお家にいる間だけは、一緒にいられれば良いと、思ってなりません。
 ほうっと息を吐きました。
 無性に継春くんの顔が見たいと思いました。