白。
白。
白。
白。
白。
一面の――白。
ごうごうと風が吹き、吹き付ける雪が顔に痛い。
吐息さえもが白い、などというようなことを考える余裕もなく、急速に体の芯から凍えていく。
満足に顔を上げることもできず、腕でどうにか顔を防護しながら、地面ばかりを見て歩く。
どこまで行っても真っ白で、方向感覚も距離感覚も、何もかもがわからない。
ここはどこだ?
どちらを向いている?
目的地はどこだ?
前が、見えない――
白。
白。
白。
白。
白。
白。
光。
そこに――飛び込む。
「いらっしゃいませー」
暖かい店内に迎えられ、ほっと一息吐いた。
頭や肩、身体中についた雪を払い落とし、目的の物を探す。
それは真ん中の棚の一番奥に置いてあった。
人気のスナック菓子の新しい味。
決して自分が食べたいわけではない。
姉が突然、テレビのCMを見たら食べたくなったと言ってきたのだ。
こんな物のために……。
ちらりと外を見る。
真っ白だ。大吹雪だ。
「帰れる、かなぁ……」
家からわずか十分の距離のコンビニ。そこで遭難しそうになるとは誰も思うまい。
終わり